今、子どもたちに繋げたい想い

次の世代と向き合うことは、次の時代を育てること。

高岡市では、国の構造改革特別区域計画「高岡市ものづくり・デザイン人材育成特区」の認定を受け、2006 年( 平成18年4 月) から、市内の小中特別支援学校全40 校で、高岡市の歴史や産業の特徴を生かした市独自の必修教科「ものづくり・デザイン科」をスタート。2009 年( 平成21 年) からは、学校や地域の特色を生かした特別の教育課程を編成し、教育を実施する「教育課程特例校」として、文部科学省の承認を受け実施しています。
高岡市の「ものづくり・デザイン科」は、地域の伝統工芸や産業に目を向けた取り組みとしては、全国唯一のものです。

株式会社 高田製作所 常務取締役高田晃一さんは「ものづくり・デザイン科」とは別に、 2009 年( 平成21 年) から年に一度、地元の高岡市立博労(ばくろう)小学校で、5年生を対象に「デザイン」についての授業を行っています。
博労小学校では「ものづくり・デザイン科」の授業に加え、高田常務の特別講義を取り入れています。なんでも、つくり手の思いを膨らませることから始める個性的なデザイン講義だとか。子どもたちにどんなことを教えているのか、また高田常務の子どもたちに伝えたい思いをお聞きしました。

高田常務が小学校で子どもたちに授業をするようになったきっかけはなんだったんですか?

高田:2009年(平成21年)、私の母校である高岡市の博労(ばくろう)小学校の安田教頭先生からお電話をいただきました。ちょうどシロカネブランドの開発をスタートしていた時でした。
博労小学校は「ものづくり・デザイン科」の授業として、プロの鋳物師を特別講師に招いて子どもたちに鋳物の製造から仕上がりまでの製造工程の体験実習をさせています。
安田先生は「子どもたちには、いろんなことを通じてもっと夢を持ってもらいたい、未来に打ち勝つ強い大人になってもらいたいと、常日頃より考えています」とお話しになり、そして「2005年から単独で海外の展示会に出展なさっていたことを新聞やテレビで拝見しました。『思い続ければ願いは叶う』そんな、未来に希望が持てるような明るく力強いお話を、ものづくりを通した実体験として、ぜひ子どもたちに話していただきたい。」
そうおっしゃり、ご依頼くださったことがきっかけでした。

先生は、授業をする上で、高田さんにどんな要望を出されたのでしょうか。

高田:2005年のミラノサローネに出展してから今日までの苦労話や、いつも夢を持ち、その夢を絶対にあきらめない姿勢などを、子どもたちに教えてほしいとのことでした。とても光栄に思いましたし、私でよければぜひお役に立ちたいとすぐにお返事しました。

決してあきらめないものづくり、すてきです。こうして博労小学校での特別授業が始まったのですね。

高田:現在、5年生の教室で、秋に行われる鋳物実習の前に授業しています。もう今年で2回目です。デザインとはどんなことか講義した後、実際に自分でデザインを考え、発表するまでの約2時間の内容です。それをもとに子どもたちは鋳物実習のデザインを考えます。

高田さんの授業とは、どんな内容なのでしょうか。小学5年生のデザインの実習とは、どんなことをするのですか。

高田:まず簡単に、私が小学5年の頃から大学までの話をします。絵の先生に学んだことや、デザインコンテストに出し続けたこと、出会った先輩方のことなど、実際のエピソードを交えながら、「私が学んだデザイン」は「誰かのために何かをつくること」だと、説明します。

そして、黒板に5つの項目を書きながら、実際に「デザイン」を実習します。
1) 身の回りにある大きなもの
2) 身の回りにある小さなもの
3) 好きな言葉
4) 好きな動物
5) 好きな人の名前
6) 好きな人の好きな色
1) と2) は、現状。3) と4) は、インスピレーション。
5) と6) は、デザインをする目的です。ランダムにあてていくのですが、
子どもたちからはたくさんの回答がでてきます。

眼鏡。花瓶。えんぴつ。消しゴム。
いす、机、黒板、電灯、パンツ、トイレットペーパー。
お父さん、お母さん、兄弟、先生。
赤色、ピンク色、緑、青、茶色、黒。
アリ、象、虫、犬、ネコ、リス、ウサギ、金魚、鯉。
項目ごとに具体的に言葉を出していく、ゲーム感覚なブレーンストーミングを行います。

1) から6) を組み合わせると、「あるもの」のかたちが脳の中に見えてくる。
このゲームを通し、具体的なデザインコンセプトが出来上がっていきます。

なるほど。では、たとえば「お父さんが使う、青い牛の模様の、象のかたちをしたマグカップ」はどうでしょうか。

高田:それは面白いですね。マグカップは生活の中でとても身近なものですよね。子どもたちからはこんな提案がありました。「先生が使う、ピンク色の、アリ模様をした、象のかたちの机」。そう言うと、すでにそのデザインをそれぞれの頭の中で想像している子どもたちは、大きく笑います。
「楽しい発想でできたものはきっとその人も使ってくれる。大切なのは使う人の顔を思い浮かべてつくること。先生のために一生懸命考えてつくったものなら、きっと先生の役にも立つはず」
そうアドバイスすると、子どもたちは、使ってほしい人をそれぞれの頭に思い描いて、より身近にデザインを理解するようです。
つまり「誰かのためになにかをつくること」が、「その人の役に立つものづくり」となる。
たとえひとつの雑貨でも、ギフトとしてもらった人の気持ちはあたたかく幸せになるもの。そこで、弊社の製品を見せます。可愛い名刺ケースや鏡のように磨かれたスタイリッシュな花瓶、ホテルの客室の棚や特急電車のテーブルなどが出てくると「こんなものも高岡銅器なんだ」と目を輝かせ、みんなとても真剣に触りだします。

子どもたちの興味がわくような、とても発展的な授業ですね。 今後もこの授業を続けていきたいと思いますか。

高田:とても喜んでくれるので、機会があればずっと続けていきたいです。子どもたちの感性に触れられることは、私にとっても新鮮で刺激的です。
授業が終わると、一人ひとりから感想文をもらいます。これは毎回の楽しみです。

生徒さんたちからいただいたお礼の文集

最初にお手紙をもらった時。読んでいくうちに「高田さんを目指す」「尊敬しました」「私は高田さんを越える」という言葉が次々出てきて、感激しました。
「僕は医者になる。高田さんのような自由な発想で医者になりたい」という感想も。毎回、いろいろなことを考えさせられ、勉強させられるので、自分自身にとってもたいへん貴重な機会だと思っています。